ビジョンやミッションに強く共感し、「社会のために良いことができる」と感じてダノンに入社
ダノンに入社するまでのご経歴を教えてください。

大学卒業後、地元福岡で九州旅客鉄道会社に入社し、現場業務や広報などを経験しました。地元九州で働きたいという想いがあったからです。その後、アメリカのサンダーバード国際経営大学院でMBAを取得して、帰国後にP&Gに入社しました。これが私のマーケター人生の始まりです。
P&Gでは、マーケティングの基礎を徹底的に教えられました。P&Gでは紙おむつと化粧品ブランドに携わることができましたので、いわゆるFMCGと違う商品も扱ってみたいと思い、次は外資系高級宝飾メーカーでラグジュアリーブランドのマーケティングを経験しました。
そうして一通り経験を積んだところで、「私は何がしたいのだろう?」と突き詰めて考えるタイミングがありました。地元九州の鉄道会社に入った理由もそうでしたが、私は社会のために良いことをしたいという気持ちが強いこと、また競争が激しい中でやりがいを感じていることを再確認しました。
そうした自身の価値観をもって、グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン株式会社に転職を決めました。GSKコンシューマー・ヘルスケアには14年ほど在籍し全ブランドのマーケティングを担当させていただき、APACでのマーケティングの経験もしましたし、最終的には、日本・韓国のマーケティング統括責任者を経験しました。その後、日系インテリア企業を経て、2023年にダノンジャパンにやってきました。
なぜ転職先にダノンを選んだのですか?
「社会のために良いことができる」と感じたからです。
P&Gでの紙おむつブランドの経験、そしてGSKコンシューマー・ヘルスケアでのOTCやオーラルケアブランドに長く携わってきた中で、ブランドを通じて社会や人の生活に役に立てる事が自分自身にとって仕事をする上で大事な価値観となっています。ダノンなら、それができると感じました。
実は、入社前はダノンのことをよく知りませんでした。調べていく中で、ダノン製品のすばらしさ、会社のビジョン・ミッションに強く共感しました。ダノンのビジョンは「One Planet. One Health」、ミッションは「世界中のより多くの人々に食を通じて健康をお届けする」です(※このビジョンは、人々の健康と地球の健康は相互につながっているというダノンの考えを反映しています)。ダノンは、このビジョン・ミッションを真剣に実現しようとしています。ダノンブランドとその製品は消費者を健康にしよう、という意気込みを感じるものばかりなのです。
マーケティングという仕事の魅力を教えてください。
マーケティングの面白さは、消費者インサイトを深く理解し、コンセプトを作り製品を開発して、お客さまに届けていくという一連の業務に関われることです。作り手の視点に立てることに魅力を感じています。また業務範囲が広いので、いろいろと工夫できるところも楽しいですね。商品の便益をいかに伝えるかに関しても、インサイトを掘り下げていくことで、同じ便益であっても、消費者の気持ちに寄り添った伝え方をすることができます。マーケティングはいつもお客さま視点で常に物事をとらえ、あくなき改善とよりよい価値の提供を追求できますので、飽きることがありません。
ダノンらしい製品をこだわり抜いて開発し、マーケティングすることができる
現在の仕事内容とコミットメントを教えてください。

現在はマーケティングディレクターとして、ダノンジャパンのマーケティングの全てに関わっています。
目指しているのは、第一に、ダノン製品が属する「市場の成長とブランドの成長を消費者起点のマーケティングで両方実現する」ことです。第二に、マーケティングチームの「チーム力の最大化を果たす」ことです。私はこの2つをコミットメントとしてチーム内に宣言しています。ビジネスの目標を高く設定し、その目標を達成するには何をやるべきなのか、何が必要なのか、という発想でグロースマインドセットをもってチーム一丸となって市場の成長とブランドの成長の両方を達成したいと思っています。
ダノンでマーケターとして働く魅力を教えてください。
ダノンのマーケティングと製品開発の特徴として、「ローカルファースト」があります。グローバルのスケールとローカルファーストのバランスが良い会社で、ビジョン・ミッションなどは世界共通ですが、一方で製品開発とマーケティングはローカルの消費者に向けて企画・実行されます。ダノンジャパンの製品は、中身もパッケージも、私たち日本法人が長年、日本の消費者向けに作ってきました。
つまり、ここではダノンらしい製品を日本のお客さまに向けてこだわり抜いて開発しお客さまに届けていくという、End to Endのマーケティングをすることができるのです。妥協することなく日本の消費者に向けた差別化を追求できます。ダノンのマーケティングチームは、自分たちの頭で考え、仮説を立てて消費者に投げ掛ける100本ノックを日々行って製品開発やコミュニケーションプランニングに勤しんでいます。
それから、入社して素晴らしいと思ったのは、マーケティング部門内に、Strategy & Insightチームがいて消費者インサイトやカテゴリートレンドを調査と分析を通じて戦略的にディスカッションし、意思決定できることです。調査をする際も、調査票作成から分析まで、一貫して自社で行っています。スキルが非常に高く、私たちのイノベーションスピードを戦略的にがっちりと支える存在です。
ちなみに、ダノンの製品ラインナップは国ごとに異なります。文化や慣習、味の好みなどの違いに対応しているからこそ、各国の状況に応じたラインナップとなっています。日本では、日本の文化と生活習慣に適した製品開発にまい進しています。
具体的なマーケティング事例を教えてください。
市場とブランドの成長を実現するためには、深い消費者理解をもとにした、「差別化」と「新たな需要の創造」が大切だと考えています。

「差別化」の事例として「ダノンビオ」のお話をします。日本では、ヨーグルトといえば「おなかに良さそう」と思われている一方で、どのヨーグルトも同じだと思われがちです。しかし、「ダノンビオ」はダノンが長きにわたって研究開発を重ねてこだわり抜いたBE80菌という特別な菌が入っているヨーグルトです。そこで、「ダノンビオ」の良さを消費者の方々に違いをもって理解していただくために「100倍胃酸に強いBE80菌のダノンビオ」という製品特徴をわかりやすく表現して展開することでビジネスを伸ばしています。

「新たな需要の創造」の事例としては、「ダノンオイコス(以下 オイコス)」と「Alpro(以下 アルプロ)」をご紹介します。両ブランドに共通するのは、マーケットのリーディングブランドである点、つまりブランドの成長がマーケットの成長に直結する点です。またどちらも、「世界中のより多くの人々に食を通じて健康をお届けする」というミッションを体現している、会社の戦略的にも大切な役割を担うブランドです。しかも、日本のお客さま向けに、おいしさを追求しています。これが、ダノンらしさです。

プロテインヨーグルトの「オイコス」は、エクササイズをされているヘルスコンシャスなお客さまに好評で、社内にもファンがたくさんいます。季節ごとに味の変わるシーズナル商品も期間限定で発売しながら、ブランドの価値である「高タンパク質・脂肪ゼロ・低GI」を訴求して継続的にブランドの成長と市場拡大のけん引を実現しています。
「アルプロ」は、大豆やオーツ麦といった植物素材の良さを活かすことにこだわった植物性食品ブランドで、植物性食品に対する注目が世界中で高まる中、欧州を中心に市場をリードしています。日本でも植物性ミルク市場の拡大へ寄与するべく、2020年に販売開始しました。日本の消費者が好む日本独自の味わいやパッケージ、フレーバー展開で日本のオーツミルク市場をけん引しています。インスタグラムなどでも積極的に情報発信を行っています。インスタではアルプロを使ったレシピなどもご紹介しており、昨年人気だったレシピは“ストロベリーオーツオレ”や“にんじんオーツミルクブレッド”でした。
自分たちが意思決定する「責任の重さ」を楽しめる人を求めている
ダノンジャパンのカルチャーや人材育成方針を教えてください。
ダノンジャパンは、世界標準の良い会社の証である「Bコープ」認証を、⽇本の大手消費財メーカーそして⾷品業界で初めて、2020年5⽉に取得しました。さらに2023年に認証を更新しました。これは単に良い会社であるだけでなく、良い会社であろうと改革・改善しつづける姿勢が認められたことを意味します。さまざまな面で、改革・改善を止めない会社です。
社員のバックグラウンドは多様です。さまざまなキャリアを積んだメンバーが在籍しています。私も食品業界は初めてですが、社内で珍しい存在ではありません。あとは、ヘルスコンシャスな社員やスポーツをしている社員も多い印象です。私も最近ヨガを始めました。また、食べることに興味がある社員もたくさんいるように感じます。
キャリアに関していえば、できるだけ社内でプロモーションを増やす方針を持っておりますし、またグローバル人材を大切に育てようとしています。たとえば、最近では、日本法人のブランド統括マネジャーだった者が、上海で中国市場のイノベーションを考えるポジションに就いています。フランス本国で活躍する日本人のメンバーもいます。本人と会社のニーズが一致すれば、こうした異動が十分にあり得る会社です。キャリアはあくまでも本人がドライブするもの。私たちは、本人が望むことをできる限りサポートする方針です。
どんな人が活躍していますか?
ドライビングシートに座って、自分のキャリアを自らマネジメントできる人です。加えて、日本人の健康に寄与したいという想いがあり、マーケティングを通じてお客さまに付加価値の高い製品を届けたいと願う人なら、きっとダノンで活躍できます。
それから、ビジネスのスピードが極めて速いので、そのスピード感を楽しめる人がいいですね。良い意味で完璧を求めず、取るべきリスクを取り、走りながら学べる人が合っています。最後に、ローカルファーストで自分たちが意思決定する「責任の重さ」を楽しめる人を求めています。ぜひ私たちと一緒に、市場とブランドの成長を実現しましょう! ダノンはそれができる会社です。
インタビューを終えて
聞き手:コンサルタント 安齋 陽子

2桁成長をしているダノン。製品開発の特徴としてグローバルがローカルファーストの考えをもっている外資系企業は珍しく、日本の消費者に向き合ったマーケティングに携わることのできる環境は魅力的です。これまでに食品業界を経験したことのない方も活躍されており、今回お話しを伺った中川さんもそのお一人です。インタビューにはたくさんの方々にご協力いただきましたが、終始笑いの絶えない現場で、雰囲気の良い社風を肌で感じることができました。
Photo by ikuko
Text by 米川青馬
Edit by ISSコンサルティング