外資系企業でマーケターとしてご活躍の方々に「仕事の魅力」「キャリア」についてお伺いしていくインタビュー。今回は、世界の化粧品業界のリーダー『日本ロレアル』小野田 遼平さんです。(聞き手:鈴木玄)
営業、製品開発、マーケティングの経験を通じて、ブランドの重みを実感
日本ロレアルに入社した経緯を教えて下さい。
就職活動では、美容・ホテル・商社・広告など、興味ある業界のNo.1企業に絞って受け、最初に内定をいただいた日本ロレアルに入社を決めました。
興味を持った業界の共通点は、お客様に喜んでいただけて、ビジネスモデルに多様性があること。この2つは今も大事にしているポイントです。業界トップに絞ったのは、学べることが最も多いだろうと考えたから。日本ロレアルは、自分自身が消費者としての接点が、当時まだ多くなかったこともあり、なぜ世界第1位でありつづけているのか、その秘密を知りたいという好奇心もありました。日本ロレアルへの入社を決めたとき、家族が喜んでくれたのもうれしかったですね。
入社後は、様々なブランド、役割を歴任されていらっしゃるのですね。詳しく教えてください。
入社後は、新入社員研修を経て、美容室向けのビジネスを展開するプロフェッショナル プロダクツ事業本部に配属となり、「ロレアル プロフェッショナル」の営業職としてキャリアをスタートしました。「ロレアル プロフェッショナル」は、カラー剤・パーマ剤・ヘアケア剤・スタイリング剤などのラインナップを保有する美容室専売ブランドです。
営業として工夫していたことは、相手に合わせた戦略を作り、実行していくことです。代理店に対しては、競合製品との差別化ポイントを詳しく説明し、美容室に対しては、製品を使うことでお客様にどう喜んでいただけるか、経営にどうプラスになるかといった付加価値を中心に商談します。美容師の方々はプロとして製品への要求水準が高く、タフな交渉相手となることが多いのですが、率直なご意見をダイレクトに伺えたことは今に生きています。
営業を6年経験した後、マーケティング部門に異動となり、「ロレアル プロフェッショナル」の製品開発を担当しました。異動を希望したのは、営業現場の声が製品づくりにどう反映されるのかを学びたかったからです。営業から製品開発への異動は前例がなかったのですが、私にはそこも魅力に感じられました。
ブランドの価値を大切にしながら、消費者の声に耳を傾け、新たな製品を生み出す。どの業界・企業でも、製品開発の基本は同じだと思います。ただ、「ロレアル プロフェッショナル」の製品開発の特徴は、消費者だけでなく、施術を施す美容師の方々の意見も製品の成功に不可欠だということです。特にカラー剤やパーマ剤はプロが使用する製品ですので、美容室の現場のニーズに最適な付加価値の高い製品を提供してくことが求められています。消費者向け、美容師向けに、製品コンセプトやメッセージをそれぞれ考案する必要があり、この多様な視点が面白いと感じました。
営業時代は「なぜもっと早く新製品を作れないのだろう?」と思っていましたが、開発側に身を移すと、皆が本当に多くの時間をかけ、細部まで強いこだわりを持って1つ1つの製品が生み出されていることに気づきました。ブランドの価値や歴史の重みを実感しました。また、日本は開発の裁量が大きく、日本マーケット向けの処方も行なっています。仕事を通じて別の市場ではどうなっているかという視点を持ち、世界にも興味を持つようになりました。
その後の異動で、「ケラスターゼ」のグループプロダクトマネージャー、「ロレアル プロフェッショナル」のマーケティングマネージャーを経験しました。製品のコンセプト立案・プロモーション立案・メディアプランニングといったマーケティングの基礎経験を積みながら、部下の育成や予算管理、サプライチェーン、薬事法や輸入関連法のチェックなどにも、主体的に携わりました。
また、マーケティングマネージャーになってからは、美容室の店内に設置する製品の陳列什器やカウンセリングツールの製作、お客様の入店から退店までの2-3時間のカスタマージャーニを演出するトレードマーケティング、美容師の方々とのパートナーシップを深めインフルエンサーになっていただいたり、イベントに登壇していただいたりといったアーティストリレーションも重要な任務となりました。マーケティングで大切なのは、数字とブランドのあるべき姿です。ブランドを大切にすること、ブランドのために何をすべきかを考えられることが必要不可欠な視点だと常々実感しています。
現在は、プロフェッショナル プロダクツ事業本部ロレアル プロフェッショナル・シュウ ウエムラ本部を統括する本部長の役職に就いています。事業本部の経営陣の一人として責任を持ち、本部全体への影響を強く意識するようになりました。現職に就いてからも、美容師の方々や現場との接点を意識的に持ち、消費者理解を深め続けています。
世界中の美容ビジネスに関する情報・ノウハウを総合的に持っていることが最大の強み
プロフェッショナル プロダクツ事業本部で働く魅力はどこにありますか?
プロフェッショナル プロダクツ事業本部では、代理店、美容室、消費者をターゲットにマーケティングを行っていきます。複雑な環境下でビジネスをリードする経験は、マーケターとして、社会人として、多くの学びがあると日々実感しています。
そして、世界中の美容ビジネスに関する情報・ノウハウを持っていることは、ロレアルグループの圧倒的な強みです。最近、アジア圏への事業展開を進める美容室が増えています。私たちはこうしたお客様に、アジア各国の美容ビジネスの展望や消費者の行動習慣等の情報を総合的に提供しており、長年にわたって培ってきたグローバル企業ならではの実績と知見があるからこそだと自負しています。世界中でビジネスを展開し、多くの国でマーケットリーダーとなっているロレアルグループの強みをさらに活かせる時代になってきました。
また、ロレアルには挑戦を後押しするカルチャーがあり、チャレンジや学びの機会にあふれています。入社後のキャリアを振り返ると、常に新しい刺激がありました。大きな裁量権のもとスピード感をもって意思決定をし、試行錯誤をしながら1つ1つのチャレンジを乗り越えるうちに、社会人としての基礎体力、体幹が強くなっているように感じます。
現在はどのようなことに注力しているのですか?
注力領域の1つは「デジタル化」です。現在、プロフェッショナル プロダクツ事業本部では「COLOR ME」というオリジナルアプリを展開しています。これは画面上でヘアカラーやメイクアップをシミュレーションできるカウンセリングアプリです。ブランド情報・製品情報も配信でき、お客様とのダイレクトコミュニケーションも行っています。
また、2020年には美容師向けの教育コンテンツサイトも開設する予定で、美容業界にさまざまなイノベーションを起こそうと画策しています。ブランドとビジネスを両立させ、お客様とのWin-Winを考えながら、美容業界のデジタルの最適化を構築していきます。
挑戦を続ければ、成長の場はどんどん広げられる
どんな方と一緒に働きたいですか?
起業家精神の旺盛な方ですね。大きな裁量権を持って、主体的にビジネスを動かしたい方、オーナーシップを持ってビジネスに取り組みたい方は大歓迎です。ロレアルグループには、豊富なデータや事例がそろっており、考察を深め、新しいアイディアを生み出せる環境があります。
ロレアルには個人のチャレンジをサポートするカルチャーがありますが、目的・目標が明確な方やゴールの達成に向けて挑戦を続ける方ほど、チャンスを手にしながら、活躍の場がどんどん広がっています。