INTERVIEW
企業インタビュー

 企業インタビュー
プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社 岡田 久雄

ビジネスを変革する デジタル戦略 Vol.3

プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社

ヘアケア事業部 アソシエートディレクター

岡田 久雄

2005年に東京大学工学部卒業後、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社
(以下「P&G」)入社。SK-Ⅱへ配属され、スキンケア部門でマーケティングを担当。入社2年目でシンガポールへ赴任し、アジア各国からの人材で構成されるマルチカントリーチームのリーダーを務めた後、ヘアケア部門へ異動。パンテーンのアシスタントブランドマネージャーとして活躍後、2010年にパンテーン・ウエラのブランドマネージャーに昇進。2012年よりブランドマネージャーとしてパンパース、ファブリーズ、ジョイを担当後、2016年よりヘアケア事業部全体のアソシエートディレクターとして活躍中。

公開日:2017年3月21日
(インタビュー実施時の御所属・役職名にて
記載させて頂いております)

シンガポールで日本人の強みを知った

P&Gへの入社理由を教えてください。

lcms03_02大学ではボート部に所属していました。年300日が合宿という部活で、キャリアを積極的に考える時間などなかったのですが、友人が就職活動に熱心で、彼と話しているうちに、社会勉強として就職活動を始めてみようという気になりました。そこでたまたま参加したのが、P&Gのインターンシップだったのです。

そのインターンシップでは、1週間をかけて、薬用石けんミューズのマーケティング戦略を考えました。保育園に赴いて園児がミューズを楽しそうに泡立てている姿などを調査し、大学生チームが自分たちなりに新たな戦略を立てていくのです。私はその経験を通して、マーケティングに興味を持ちました。それまでは、マーケティングというのはデータや数字をベースに企画する仕事で、自分には似合わないと思いこんでいました。しかし、実際のマーケターの皆さんは、机上の空論ではなく、頻繁に現場に足を運んで生の情報を得ながら、何とかして既成概念を打ち壊そうとしていたのです。ぜひ自分もチャレンジしてみたいと思いました。

もちろん、就職活動ではさまざまな企業を回り、いくつも企業や職種を検討したのですが、最終的にはマーケティング職を希望してP&Gに入社しました。その理由は、私の夢と関係があります。私には、いつか自分で中学校・高校を創りたい、経営したいという夢があります。スポーツでも野菜作りでも何でもよいのですが、生徒一人ひとりの好きなもの、やりたいことを尊重する学校を設立し、多くの生徒の強みを引き出せたら、日本がより強い社会になるのではないかと思うからです。そして、私はその学校の運営、つまり理念設定やカリキュラムづくり、人材育成、組織管理、経営管理などに、マーケティングのフレームワークが役立つのではないかと考えました。それなら、やはり「マーケティングの本家本元」であるP&Gで学ぶのが一番良いだろうと思い、入社を決断しました。

入社2年目で早速シンガポールに赴任していますが、いかがでしたか?

とにかく学ぶことの多い時期でした。特に、日本を外から眺めることができたのが良い体験になりました。月並みですが四季の素晴らしさを改めて認識しましたし、日本人はグローバルで十分に戦っていけることもわかりました。特に、妥協せずに課題を乗り越え、高い質の仕事を目指すところは、多くの日本人が持つ強みだと感じました。ただ一方で、自分を含めた日本人が世界で活躍するためには、英語を含めたコミュニケーション力を磨かなければならないということも痛感しました。シンガポールで働いて、日本で学校を創りたいという想いはさらに強くなりました。

ブランディング、マーケティングに関して言えば、シンガポール時代は、さまざまな本を読み、仕事で試行錯誤するなかで、スキルの「種」を植える時期だったと捉えています。それは日本に帰ってきてから、さまざまな形で花開きました。私はシンガポール時代も含めて3年ほどSK-Ⅱを担当した後、パンテーン、ファブリーズ、パンパース、ジョイといったブランドを経験してきました。いくつものブランドを渡り歩いたのは、私の主体的な選択です。そうやってさまざまな商品に関わって、多種多様な方と出会い、多岐にわたるチャレンジをするのが刺激的で好きなのです。これらの出会いやチャレンジが、私の知識やスキルを形成してきました。

デジタルはツールに過ぎない

マーケティングのデジタル活用をどのように捉えていますか?

lcms03_03私は、デジタルはツールに過ぎないと考えています。なぜなら、P&Gのマーケティングが最も大事にしているのは、普遍的な人間の欲望だからです。幸せになりたい、おいしいものを食べたい、異性に好かれたいといった根源的な欲求は、デジタルが発達したからといって何ら変わっていません。それなら、その普遍的な部分をしっかりと見つめ、一人ひとりの人間とどう向き合っていくかを大切にしながら、コミュニケーション戦略を考えるのが本筋だと思います。もちろん、コミュニケーション戦略を立てた上で、SNS、ビッグデータ、AIなどのデジタルツールをどう使うかを考えることはとても重要ですが、戦略を立てる際にデジタルツールの発達に惑わされてしまうと、マーケティングの本質を見失いかねないと思っています。

ただ一方で、デジタルの発達によってマスコミュニケーションが衰え、パーソナリゼーションが進んでいることは注目すべき点です。それに伴って、ライフスタイルが大きく変わってきているからです。たとえば、今後は一人ひとりに個別のマーケティングメッセージが届くのが普通になるでしょうし、あらゆる分野で「自分用の商品」を細かく選べる時代がやってくるでしょう。自分の髪質や好みにピッタリ合ったシャンプー、自分の足と感性にフィットするこの世に一つのスニーカーなどを、当たり前のように買えるようになるのです。流行に敏感な方はご存じだと思いますが、そうした状況はすでに一部実現してきています。

そうなったとき、当然、メディアやコミュニケーションの作法は変わっているでしょう。たとえば、ブランドを全面に押し出す従来のマスマーケティングの手法は、すでに押しつけがましいと感じられるケースが出てきています。企業からのメッセージよりも、オピニオンリーダーのコメントやユーザーの感想のほうが大きな力を発揮する時代になってきたのです。そうした時代のマーケティングで重要なのは、自然発生的な口コミをできるだけ多く生み出してもらえるように工夫することです。人間の本質的な欲求や、世代によるニーズ・好みの違いなどを踏まえながら、口コミを増やしていくためのコミュニケーションの最適解を一つひとつ丁寧に導き出すことが大切なのです。

たとえば、私はファブリーズを担当していたとき、ある有名な女優さんとドライブデートをする権利が当たるキャンペーンを行いました。その成功を受けて、さらにご当地美女とドライブデートができるキャンペーンも実施しました。これは、特に男性の「モテたい欲求」に火をつけようとした企画です。デジタルメディアも含めて、メディアによって少しずつ出し方を変えながらマーケティングを進めていったところ、SNSを中心に口コミで情報が爆発的に広まり、結果的に大きな成果を得ることができました。

一方で、ある商品をインスタグラムのユーザーに宣伝してもらう作戦は、ほぼ失敗します。なぜなら、その方々がお金をもらって、その商品を宣伝していることに多くの方が気づくからです。嘘や作りごとはすぐにバレてしまうようになったのです。

こうしたマーケティング企画には、もちろん一つの正解などはありません。それどころか、3カ月も経てば、ある手法の効果が急速に下がるといったことも十分にありえます。そうした状況のなかで本質を見極め、そのときどきで何がうまくいくかを考え、実行するのがマーケティングの醍醐味です。

現在のマーケティング手法の型の多くをつくったのは自分たちである

P&Gのマーケティングの強みを教えてください。

lcms03_04大きく分けて4つほどあると思います。1つ目に、一人ひとりの価値観の違い、多様性を積極的に受け入れている点です。たとえば、今の若い世代は、自分のやりたいことにチャレンジしたいという想いが強い傾向があります。そうしたタイプのメンバーに対しては、私はこれまでの成果をプラスに捉えながら、得意領域へのチャレンジをさらに促すことが重要だと考えています。このようにしてさまざまな価値観を理解し、メンバーそれぞれが輝く環境をつくるのがP&Gのマネジメントの役割です。その成果として、P&Gではどのチームでも個の多様性を大事にする環境が整っていると思います。もちろん、女性活躍推進などを組織的に重視していることは言うまでもありません。

2つ目に、P&Gグローバルで価値観やキーワードを共有している点です。マーケティングの考え方や進め方が世界共通なのです。そのため、アメリカでもカンボジアでも南アフリカでも、どこにいるメンバーともすぐに協業することができます。さまざまな意味で、コミュニケーションのスピードが速いのです。たとえば、私たちが開発したジェルボール洗剤はすでに数多くの国で販売されていますが、文化の違いを乗り越え、いち早く世界中に広めることができたのは、私たちが価値観や考え方を共有できている面が大きいと感じています。

3つ目に、若いときから、グローバルの優秀なメンバーと切磋琢磨できる環境があることです。特に、シンガポールで働くチャンスが頻繁にあります。実際、私は入社2年目でシンガポールに赴任しましたし、同じように入社数年でシンガポールに駐在するメンバーが数多くいます。個人的には、若手のときに一度日本から出て、日本を外から眺める経験をすることをぜひお勧めしたいと思います。

4つ目に、P&Gがマーケティングの「本家本元」だということです。現在のマーケティング手法の型の多くをつくったのは私たちだと自負しています。その証拠に、P&Gは優秀なマーケターや経営者を多数輩出しています。さまざまな企業の経営者・経営層のプロフィールを見ると、「元P&G」の方が実に多いのです。マーケティングや経営をしっかりと学びたい方にとって、P&Gは間違いなく優れた環境です。

今後、マーケティングとデジタルはどのように進化していくと思いますか?

変わらない部分と変わる部分を見極める必要があるだろうと思います。私が扱ってきた生活消費財でいえば、本質的な必需品はかれこれ200年ほど、あまり変わっていません。シャンプー・紙おむつ・芳香剤も、今後も間違いなく多くの方に必要とされるでしょう。

一方で、デジタルが発展することで、「ユーザーエクスペリエンス」が変わり、皆さんの志向が大きく変わる可能性はあります。たとえば、ビッグデータを活用することで、電動歯ブラシの効果がより鮮明に、わかりやすく伝わるようになれば、電動歯ブラシに乗り換える人が増え、普及率が一気に高まるといったことは十分に起こりうるだろうと思います。

買い方に関しては、すでにECが一般的になりましたが、一方で小売店が大きく変貌していく未来が予想できます。Apple Storeのように、その場で簡易的なエクスペリエンス、お試しができる小売店が、どの商品分野でも増えていくのではないかと思います。

また、パーソナリゼーションの進展という意味では、今後は多くの方が、ベーシックな商品とお気に入り商品の組み合わせを楽しむようになるのではないかと思います。その先に、「自分用の商品」が果たしてどのくらいのペースでどこまで増えていくのか。私はその点に大きな関心があります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

lcms03_05いろいろとお話ししましたが、結局、マーケターとして重要なのは、人々の価値観とライフスタイルをリアルタイムでどれだけ理解し続けられるかだと思います。私は出張で東京に来た際、品川から新宿まで山手線に乗る時間をとても楽しみにしています。周りの方たちがどのようなファッションをしているか、どのような行動を取っているかを観察するのが面白いからです。朝は多くの方が下を向いていますが、昼には吊り広告を眺める方が増え、夜はほとんどの方がケータイとにらめっこしています。こういったことを知ると、自然と、時間帯によって広告メッセージを変えなければならないと考えるようになります。朝には「メークが決まると一日が楽しい。決めのスタイリング」で、夜には「今日もお疲れさま。家のバスタイムでリラックス」としたほうがよいという考え方になるのです。そうした意味では、やはりマーケティングの基本は普遍的なのだろうと思います。

プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社

日本でもアリエール、ジョイ、パンパース、ウィスパー、SK-IIなど多くの世界的ブランドを有するP&G。それらのブランドは、世界で最も厳しいと言われる日本の消費者に高く評価され、同時に世界ブランドを支える品質を押し上げる原動力にもなっています。また、現在日本でも広く知られているインターンシップ採用や職種別採用などを、アメリカでもいち早く取り入れた企業も、P&Gです。「お金とビル、ブランドを取り上げられても、社員さえいれば、10年ですべてを元通りに再建できる」というのは、1948年当時、P&G米国本社の会長であったリチャード・R・デュプリーの有名な言葉です。 この言葉の通りに、P&Gは古くから「人材こそが会社の最も重要な資産である」という理念のもと、日本においても採用活動をしています。 そのP&Gが経験者採用を開始し、重要な資産である人材を募集しています。

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