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外資系マーケティング特集
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外資系マーケティング特集 Vol.3

《奥山 真司 氏 略歴》
1989年、早稲田大学教育学部を卒業してP&G宣伝本部(現マーケティング本部)に入社。ファブリック&ホームケアのカテゴリーで、〈チアー〉〈アリエール〉(ジョイ)など、洗濯・食器洗剤のブランドを長年にわたって担当。2002年にジェネラル・マネージャーとなり、現在は06年にP&Gグループに加わったジレット事業部門のヴァイス・プレジデントとして、日本・韓国におけるビジネスを統轄している。

【2006/10/26 公開】

現在ジレット担当のヴァイス・プレジデントをしておられますが、仕事の内容を教えてください。

 基本的には、担当しているカテゴリーのビジネスを全般にわたって経営し、売り上げと利益に責任をもつことが仕事です。いまはジレットの日本と韓国のビジネスを、すべて任されています。ブランドとしては電気シェーバーの〈ブラウン〉、安全カミソリの〈ジレット〉、電動歯ブラシの〈ブラウン オーラルB〉などがあり、組織には100人近い社員がいますから、スパンはかなり広いですね。
 また、地域内だけで仕事をしていればよいのではなく、ジレット事業を世界的に統括するプレジデントに直接レポーティングをしますし、世界各地にいるヴァイス・プレジデントたちとネットワークを組みながら、ジレットのグローバルスケールとノウハウを活用し、ビジネスを成長させていくための戦略を考え、お互いに良い影響を及ぼしあっていくことが求められます。

ジレットはM&AによってP&Gに加わったわけですが、組織を運営する上でシステムやカルチャーの違いを感じることや、ご苦労されることはありますか?

 P&Gにはもともと、ダイバーシティ(多様性)を大事にするカルチャーが強くあります。それも性別や国籍だけのダイバーシティではなく、いろいろなビジネス、組織を育てるときの心構えですとか価値観などに関して、異なる考え方やアイデアを互いに尊重しあい、そこからより良いものをつくり出そうとする。ですから、ファンクションの違いや年齢、肩書きに関係なく、だれもが自分の意見を言えるし、議論も行える。そういう下地があることは、合併やM&Aによる組織の統合、再編でも生きてくると思います。
 よく、「カルチャーが違うと大変だろう」と言いますが、組織やビジネスの運営上で“カルチャーの違い”とは何かを突き詰めていくと、そんなに概念的なものじゃない。仕事の進め方の違い、プロセスの違いなんです。あるいは評価するシステムの違いであったり、求められるスキルへの期待度の違い。だから「意識」ではなく「具体的システム」だと私は思います。そこでリーダーとしては、概念的にカルチャーの違いをわかりあおうと言うよりも、仕事のやり方、プロセス、求められるスキルについて、いままでのものと何が違うのか、何をどのように変えればよいのかを具体的に、きちんと伝えてあげなくてはいけない。そうすることでメンバー全体の不安を取り除くことが、私の大きな役目だと思っています。一人ひとりと対話しながら新しい組織をつくっていくのは、決して楽なことではありませんが、カルチャーが違うからうまくいかないという言い訳はしたくないですね。

奥山さんは新卒でP&Gに入られたわけですが、なぜP&Gを選ばれたのですか?

 就職活動のときには、会社選びの基準として3つのことを考えていました。まず、自分で仕事をコントロールできるようになるまで何十年もかかるような、ヒエラルキーがかっちりと決まっている会社はだめ。次に、大学で専攻していた言語表現やコミュニケーションの知識を生かせる仕事ができること。3つ目が、自分の実生活と繋がりがあるビジネスで、仕事に自分の思いを込めることができ、その成果が目に見えて実感できること。この3つを基準に、マスコミや広告代理店、商社などもまわりました。
 ですから、P&Gもはじめは一つの候補で、内定をもらったときは、会社が関西だからどうしようか迷っていたんです。ところが、大学の先輩に当たる人がたまたまP&Gにいて、若くても大きな仕事を任されるとか、人を大事にして育ててくれるとか、コミュニケーションも英語を使って、世界中の人たちと対等に渡り合えるといったことを、熱く語られてしまった(笑)。それでその言葉を信じて、この人についていけばいいんだなと思って入社を決めました。

そこからどのようにキャリアアップされてきたのですか?

 入社して4~5年は洗濯洗剤関連部門、いまで言うファブリック&ホームケアというカテゴリーでブランド・アシスタント、アシスタント・ブランドマネージャーをしました。そこでは消費者の洗剤・洗濯に対するニーズが満たされているかどうかを分析したり、市場で仕掛けるプロモーションやメディアの費用対効果の評価をするなど、マーケティングでいえば第一レベルのところを深く掘り下げてやっていきました。
 その後、ブランドマネージャーからアソシエイト・マーケティング・ディレクター(AMD)へとキャリアアップしましたが、基本的にはファブリック&ホームケアの洗剤のブランドを担当してきました。そしてジェネラル・マネージャーになって1つのカテゴリーの長として、マーケティングだけでなくファイナンス、生産、人事、研究開発という部署を含めてビジネス全体を統轄するようになっています。

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ずっとP&Gで働いてこられて、どこに魅力を感じておられますか?

 P&Gのすごくいいところは、「失敗から学ぶ」ことを奨励していること。外資には、1回失敗すると席がなくなるというイメージがありますが、P&Gはそうじゃない。「ビルド・フロム・ウィズイン( Build from Within)」といって、新卒であれ中途であれ、採用した人はきちんと育てていくので、失敗をしてもそこから何かを学びなさいというカルチャーがものすごく徹底されている。私も〈チアー〉のAMDをしていたころは、広告戦略やポジショニングで失敗ばかりしていましたよ。チアーという洗濯洗剤は、いまは市場にありません。でもその失敗から、日本の消費者に必要なコミュニケーション戦略や商品ポジショニングを学ぶことができたし、それが後に〈アリエール〉の「汚れを落とすだけでなく除菌もできる」というポジショニングの創造につながり、1ケタ台だった市場シェアを20%近くまで伸ばすことができました。
 それから、自分の成長やキャリアアップだけでなく、後輩や部下をはじめ周りの人間の成長をサポートしたり、キャリアアップを掛け値なしに喜べる気持ちを持っている人が多いことも魅力ですね。お互いが刺激しあい、影響しあうことに対してオープンで、切磋琢磨することに喜びを感じられる人が多い。それがP&Gの大きな強みになっていると思います。

最後に、P&Gへの就職を考えている方たちへのメッセージをお願いします。

 P&Gという会社に興味を持ってくださる方は、ビジネスマインドが強いと思います。自分のキャリアを実現するために、アグレッシブなビジョンを持って自分を高めていきたいと考える人が多いと思うし、戦略的な思考能力もあって、強いイニシアティブもある。それはすばらしいことですが、P&Gに入ったら自分だけでなく、周りにいる人間、部下・上司を含めて他人の成長にも興味を持ってほしいですね。基本的なことですが、一人ひとりと向かい合い、強みをひきだしてあげることのできる対話能力が本当に大事です。もう一つは目の前にある仕事の課題を、熱意とオーナーシップをもって着実に期待値以上に達成する力。10年先、15年先の未来の自分の姿を思い描き、それに固執するあまり目の前の仕事のチャレンジから逃げる人が一番だめですね。
 あと、P&Gはブランドマネジメントが経営の基本ですが、ブランド力を強めるのは、ものすごく地道な活動なんです。積極的に外に出ていって、ターゲットにしている消費者の方々の声を虚心坦懐に聞き、その声の裏にある本心を理解してきちっとしたコミュニケーションに翻訳する、その積み重ねでブランドを育てていくんです。そうした地道な努力を続けるためには、家族に対する愛情と同じように、理屈抜きでブランドに愛着を持たなくてはなりません。それができる人であれば、P&Gに入って自分を伸ばしていけると思います。

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