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外資系スペシャルインタビュー

日本ロレアル株式会社

―スペシャルコラム― 日本ロレアル株式会社 楠田倫子氏

〈楠田倫子氏略歴〉
1989年、富士銀行(現みずほ銀行)に女性総合職で入行。外資系メーカーの得意先担当をしている間にマーケティングに興味を持ち、2年半で退職。私費でコロンビア大ビジネススクールに留学してMBAを取得。インターンで勤めたワーナー・ランバート(現シック・ジャパン株式会社)に94年入社。「シック」の女性用カミソリ、男性用シェービングフォームなどのマーケティングを担当する。99年10月、日本ロレアルに移り「ケラスターゼ」「ロレアル・プロフェッショナル」を担当。新製品開発等に携わった後、2002年にマーケティング・マネジャーになり「ロレアル・プロフェッショナル」のブランド再構築に取り組む。05年10月、シュウ ウエムラ プロフェッショナル事業部 副事業部長兼マーケティング・マネジャー、06年1月より同事業部事業部長。

【2006/12/7 公開】

ロレアル・プロフェッショナルのブランド再構築ではどの様なことをされたのですか?

 まず最初に手がけたのは製品のリニューアルです。短期間でほとんどの製品を入れ替えたので、大変でした。製品開発はもとより、パッケージング、プロモーションで、日本の美容師さんの共感を得られるようなテイストにしなければならないし、消費者のトレンドにも合っていなくてはならない。同時に、ロレアルとしてフランスのタッチも必要。そのへんのさじ加減が難しかったですね。
 ブランドとして長く認知されている事業体はどれも同じだと思いますが、昔からのロイヤルカスタマーを大切にしつつ、新しい、若い顧客も惹きつけていかなければならない。そのマーケティングはすごく難しい。また、消費者や美容師さんに対してロレアルの魅力をアピールするだけでなく、中間流通である美容ディーラー(卸)さんにも、ロレアルと付き合えばこんなにいいことがあると感じてもらえるように、魅力的なビジネスストーリー作りを行ってロレアルの良さを訴えるように心がけました。

現在はシュウ ウエムラのサロン流通部門の事業部長をされておられますが、ロレアル・プロフェッショナルとは仕事の中身が大きく変わっているのですか?

 マーケティング・マネジャー兼務なのでマーケティングの比重が依然として大きいのですが、事業部長としてマーケティング部と営業部と教育部を統括する立場にいます。扱っているのはシュウ ウエムラのプロ用製品の全てで、主に美容室に販売しています。
美容室は基本的には髪を扱う場所として捉えられていますし、美容師さんも、自分は髪に関してはプロだけどメイクやスキンケアのことはよくわからないという方がまだ多い。そういう環境でコスメビジネスを確立していこうとしているわけですから、新たに作り上げなくてはならないことがたくさんあります。とはいえ、お取引先の多くはこれまでお付き合いをしてきた相手ですから、経験や土地勘のようなものは活かせます。
 また、2002年にロレアルとシュウ ウエムラが一緒になったばかりなので、部内に同一意識を持たせたり、ビジョンを掲げて同じゴールに向かわせたりすることにも、気を使いますね。それが今の大きな課題です。

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外資の場合、マーケティングが製品開発に深く関わることは少ないと思うのですが、ロレアルでは以前からそういう取り組み方をしてこられたのでしょうか?

 ロレアルでは、日本のマーケティングが成分処方から関わることができます。ベースの処方はフランスで組むことが多いですが、日本市場にあうかどうか検証し、必要に応じて修正していくわけです。また、日本で全くゼロから処方を組むこともありますよ。例えばヘアケアを例にとると、欧米の女性は髪の毛が細いのでボリューム感の出る製品が人気ですが、日本の女性はしっとり感をすごく大切にしますよね。そういう、日本人の好みに合わせた製品開発を行います。ヘアケアでもコスメでも、地域によって異なる感覚や美意識というものをとても大切にしているので、フランスの本社や研究所も私たちの意見や要望をしっかり聞き入れてくれます。今では「しっとり」「さらさら」という言葉が、世界共通語になっています(笑)。
 ロレアルの社是に「ポエット・アンド・ペザント(Poet & Peasant)」というのがあります。前会長のオーウェン・ジョーンズの言葉で「詩人のように感性豊かであると同時に、農夫のように実直かつ勤勉であれ」という意味ですが、それが社風として定着しているなと感じます。ポエティックな議論に時間を割きますし、他の会社であれば現場に出ないような立場の人が、ディテールにこだわって現場の泥臭い仕事もしていますから。

仕事の面白さをどこに感じておられますか?

 多くの美容室にとって、化粧品は新たなビジネスチャンスです。従来のヘアカラーやパーマのメニューに加えて、メイクやフェイシャルを新しいメニューとして導入したり、化粧品を販売したりすることで経営上の大きなプラスになりますし、顧客の満足度もアップする。そういうWin-Winのシナリオが書けるので、ビジネスモデルをきちんと作ることができればいくらでも伸ばしていける、大きな可能性のある分野だと思っています。シュウ ウエムラでは「ヘア&フェース」と言っていますが、美容室でコスメをやったり、フェイシャルをしたりすることが、ごく普通のことになって欲しいと思うし、そうすることが私の夢ですね。世界的に見てもトータル・ビューティサロンがトレンドなのです。そんな楽しい未来が見えるので、やっていて面白いですよ。

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ロレアルに入られて7年経ちますが、長く続けてこられた理由は何でしょう?

 チャレンジできるものが常にあったからでしょうか。一つの課題をクリアすると、必ず新しい課題が出てきましたから。会社の人材育成方針として、タフな環境の中でもがき苦しみながらもアウトプットを出せるように育てていくというのがあるのです。チャレンジすることを尊ぶカルチャーで、失敗を恐れずにどんどんやりなさいってけしかけられる。それに見事にはまってしまったのでしょうね(笑)。
 逆に言えば、リスクがあってもヘッジしながら挑戦できる人は、ここではどんどんステップアップできると思います。当然、結果は求められますが、それよりも挑戦する意欲と成功するためのシナリオを尊重してくれますし、動き出してからのプロセスも十分に見てくれる。その人の適性をしっかり見て、いいところを伸ばそうとするのです。だから私も思う存分、伸び伸びとやってこられました。

教育研修の態勢はどのようになっているのですか?

 グローバルな研修機関としては、INSEAD(欧州経営大学院)と提携した研修センターがパリにありますし、アジアゾーンでは上海に研修センターがあってさまざまなプログラムを提供しています。一方、ローカルトレーニングについてもこの2〜3年でかなり充実してきました。マネジメント系、ビジネススキル系、ビジョン・カルチャー系の3部門で、日本で開発されたプログラムを学べます。マーケティングの基礎からロレアルのマーケティングメソッドまでを、3週間かけて学ぶ新入社員や未経験者を対象にしたマーケティング研修も05年から始まりました。
 私のことを言えば、ここ3年の間に、INSEADとの提携プログラムに2度ほど行きました。内容はINSEADが開発したエグゼクティブプログラムをロレアルの社員向けにテーラーメードしたもので、新しくマネジャーになった人が、経営に必要なことを一通り学べるようになっています。

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最後に、ロレアルでマーケティングをやりたいと考えている方たちに、メッセージをお願いします。

「こうしなければいけない」という決まりごとが特になく、自由に伸び伸びやれますが、常にチャレンジが求められ、そのつど自分で考えて動かなくてはならないというタフな部分もあります。それを楽しめる人はどんどん来てください。マーケティングの活動領域は広いので、とてもやりがいがありますよ。それから、ロレアルでは一人ひとりの感性をとても大事にしますから、数字を超えた何かを求める気持ちのある人には向いていると思います。まさに、「ポエット・アンド・ペザント」を実践できる人ですね(笑)。

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