経理・財務のスキルをもって転職を考えている人は少なくない。外資系企業では、財務分野においてどんな人材を欲しているのだろうか。大手電器メーカーから外資系ソフトウエアメーカーに転職、CFOなどを経て、現在はコネクタ・メーカーのFCIジャパン・取締役コーポレートコントローラーである益村雄二氏に、ご自身の体験を踏まえてお話を伺った。
経理・財務関係の仕事には、大きくわけて4つの分野があります。まずは財務会計などのアカウンティング系、それから銀行折衝や資金調達などのトレジャリー系、税務関係のタックス系、最後に経営企画に携わるプランニング系です。
日本企業との大きな違いは、最後のプランニング系があるかないかでしょう。日本企業の場合は経営企画部など会社の方向性を決める部署が存在しますが、外資系の場合はよほどの大手でない限りありません。これらは我々コントローラーの仕事になります。その分、負担が大きいわけです。
私は一貫して経理財務畑を歩んできましたが、このプランニング系の仕事が満足にできる人というのは、外資系ではほとんど遭遇しませんでした。ですから、もし外資系企業に転職を考えている方が将来的に上位ポジションになり自分にバリューを持たせるのだとしたら、プランニング系がしっかりできるかどうかという点が成功のポイントになるかと思います。
一つは、何事もデスクワークで終わらせないということです。現場・現物を大事にするというのが私の考えなんです。机にかじりついて数字を右から左へ流すだけ、電話やメール一本で事を済ませる経理マンが本当のプロだとは思えません。
たとえば、簡単な例ですが、現在支払い業務を担当されている方が、支払伝票があがってきて、「これはダメ」「会社のルールに反する」とつき返すのは、じつは簡単なんです。そうではなくて、現場が困っていたら一緒に問題を考えて解決の方向に持っていくお手伝いをするというのが、プロの経理マンの仕事。また、工場部門が原価低減に行き詰まっていて困り果てているとき、現場と一緒に考えて知恵を出して、物事を進めてゆくのも大事だと思います。マネージャーでなくても立場立場で出来る仕事は沢山あると思います。「落としどころを現場と一緒に探す」ということです。簿記1級があろうとMBAを取っていようと、これは知識の多寡とは関係がありません。
加えて、人との信頼関係を私は重要視しています。現場の問題を一緒に考えていくことで、相手はいろいろと相談してくれますし、信頼関係が築ける。机に向かっているだけではわからない大局的な視点(判断力)を養える。そこで得られることは多いものです。一流になれるかどうかの差は、ここにあると思います。
当社にも、そうした志を高く持っている方が面接に訪れます。しかし、この仕事は一足飛びにトップになれるような類のものではありません。やはり基礎力が大事です。米国の会計基準を勉強しようとしても、まず日本のそれがわかっていないと、違いを知ることはできないでしょう。両者の相違点を知るためには日本の会計ももちろん大事です。米国式と日本式の会計を同時に行えるのも外資系では重要と考えます。
これはすべてにおいて言えることだと思います。私が社会人になりたてのころは、伝票も全部手書きで、会計帳簿をプリントしたものを再度そろばん片手に追加仕訳を行い、締め切り処理を確認するという作業をしていました。その分だけ「なぜこの数字が出るのか」「なぜこうした計算をするのか」というのを考える機会が多くあったわけです。でも今は、何も考えなくてもコンピュータが全部計算してくれる。作業は楽になりましたが、それに頼りきっていると、何か問題が起きたときに原因を探って解決していくことができません。ですから、まずは基礎をしっかりやる。「千里の道も一歩から」というわけです。
アカウンティングマネージャーとCFOとは、自ずとその役割が異なります。前者なら、机にかじりついて数字を見ていればいいかもしれません。しかし、CFOの場合は社内・社外を問わず経理財部門の最高責任者になるわけですから、ビジネスについての大局的な見方が必要です。かつ数字上の問題点を正確迅速に把握する必要があり、解決策を導き出す役割が重要です。
そのために必要なのは、最初に申し上げたように現場・現物を重視する、そして周囲との円滑なコミュニケーションを図ることに尽きるでしょう。もちろん、企業風土によって異なるとは思いますが、私の場合に限って言えば、毎日朝夕に社内のフロアと工場には出来るだけ足を運び、いろんな部署の人に声を掛けるようにしています。そうすると「じつはこういうことで困っている」といった相談事を持ち掛けられたりするんです。コントローラーやCFOという仕事は、常に周囲と心を通わせることも大事で、それは会社の問題点の早期解決にも役立ちます。
どんなに経理財務の経験を積んできたと言っても、その経験で務まるのは直属の部下を管理する経理部長のラインまで。CFOはもっと別の大事な会社経営という仕事がありますから、いきなり「やれ」と言われてできるものではありません。つね日頃自分自身の目標達成に向けて行動する必要があると思います。もちろん、経理財務の専門的知識習得は当たり前のことを前提としていますが。したがって、将来的にCFOを目指すのであれば、まずは5年先、10年先を見据えて、今の自分に足りないものを分析してほしいと思います。その上で、最初の1年で何をするか。2年目はどうするか。そうしたビジョンを描いていってほしいと思います。