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このため、日本で消費者を直接ターゲットにした医薬品関連の広告は、いわゆる市販薬(OTC※1)広告か、最近増えてきた疾患啓蒙広告、治験(※2)広告、ジェネリック(※3)広告に限られる。 また、大衆薬(一般用医薬品)の広告でも、所轄の自治体が薬事法に関わる不適切な表示・広告として指摘をするケースがある。たとえば、水虫薬について、テレビ広告で、「水虫」という文字が破壊されるイメージ画面に対し、「効能効果が確実であるかの表現である」と指摘されたり、滋養強壮薬について、男性が目を押さえながら「疲れたな〜」というシーンが、承認されていない眼精疲労への効き目を暗示していると注意されたりしている。 確かに、怪しげな民間療法や健康食品が氾濫しているだけに、医療的な効能についての表現は、厳格に規制する必要があろう。 米国でのDTC広告の経緯ところが、欧米先進国の中には、例外的に医療用医薬品のDTC広告を認めている国がある。アメリカとニュージーランドだ。 アメリカの場合、もともと合衆国憲法で認められた表現の自由との関係で、医療用医薬品の広告についても原則、許容する方針が採られている。ただ、やはり普通の商品とは大きく異なるため、FDA(連邦食品医薬品安全局)では、60年代に施行されたFederal Food & Cosmetic Actによって、広告を行う場合は、効能とリスクのバランスをとること、製品のラベルに記載されている事項を表示すること、などを義務付けてきた。 そのアメリカでもDTC広告が行われるようになったのは、80年代になってからのことである。アメリカの医薬品業界も実は、80年代前半までは、製品の信頼性を損ねたり、コストがかかりすぎたりするのではないかという理由から、DTC広告に懐疑的だったといわれる。 しかし、民間医療保険が中心で、医療コストに敏感なアメリカでは、患者や国民から医薬品情報へのニーズも強い。そうしたバックグラウンドから、徐々にDTC広告が普及していった。 当初、悪影響を懸念したFDAは、調査・検討のために83年から85年まで、DTC広告の一時中断を業界に要請したが、いろいろな調査や公聴会の結果、従来の規制で十分ということになった。 つまり、製品ラベルに記載されているような情報をきちんと表示するなら、DTC広告も構わないとしたのである。このあたりは、個人の自由を最大限尊重するアメリカらしい発想といえるだろう。 とはいえ、このやり方では、テレビやラジオを使うことは難しい。そのため、DTC広告は印刷媒体を中心に、特定の疾患について治療法(薬)が存在することを知らせるいわゆる「疾病啓蒙広告」や、医師などにその薬の存在を思い出させる「記憶喚起広告」が主流だった。 アメリカにおいて、DTC広告が質的にも量的にも大きく変わったのは、97年、FDA(食品医薬品局)がDTC広告に関するガイドライン“Guidance for Industry: Consumer-Directed Broadcast Advertisements”を発表したことにある。これは、フリーダイヤルやウェブサイトなど詳しい情報の入手先を明示すれば、製品ラベルの情報より簡略化された重要事項の記載のみでも可とするものである。 このガイドラインの発表後、アメリカではDTC広告が急増した。特に増えたのがテレビCMで、プライムタイムには必ずといっていいほど、DTC広告が流れるようになったのである。 専門誌などの調査によると、DTC広告への製薬企業の支出は、94年の2.6億ドルから2000年には25億ドルと約9倍に増加。04年においてもなお、DTC広告は対前年比27.3%増と増え続けており、44.3億ドルの規模に達している。 DTC広告に関する最近の動き
このようにアメリカで急速に普及・発展したDTC広告だが、最近、ゆり戻しの動きも見られる。 こうした動きと前後して、大手メーカーの中にDTC広告に関する自主規制を設けるところが出てきた。さらに05年8月2日には、米国研究製薬工業協会(PhRMA)が「DTC広告に関するガイドライン」を発表。06年1月から、次の4点を会員製薬企業に義務付けている
現在、アメリカのDTC広告はテレビがやや減少し、より多くの情報を提供できる新聞広告が見直されているという。 なお、アメリカと並んで、DTC広告を許可しているニュージーランドでも、規制の強化が議論されており、場合によってはDTC広告の禁止ということもありえるようだ。 まとめこのように、DTC広告はアメリカで90年代後半から爆発的に普及したが、近年は見直しの動きがある。 逆に、厳しく規制されてきた日本では、本来のDTC広告とは違う形で、患者や一般国民向けの医薬品マーケティングが模索、展開されつつある段階といえる。 医療に対する国民の関心が高まり、それにつれ医薬品に関する情報のニーズも強まっている。消費者をミスリードすることは問題だが、いろいろ情報を与えると患者が混乱するといった論法はもう通用しない。これから、日本においても、アメリカにおける経験を踏まえつつ、広い意味でのDTC広告が脚光を浴びることは間違いないだろう。 |
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