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外資系プロフェッショナルインタビュー

『外資系プロフェッショナル』特集第一弾《マーケティング編》

〈小出寛子氏 プロフィール〉
福岡県出身。東京大学文学部卒。
出版社の編集者として4年のキャリアを積んだ後、84年に渡米。ボストン大学大学院でマスコミュニケーション論終了。
86年に帰国し外資系広告会社、外資系消費財メーカーのマーケティング部門にて取締役として活躍。 2006年4月にマスターフーズリミテッド入社。現職。

【2007/7/3 公開】

感性と理性のバランスをとりながらきちんと数字を残せる人がプロだと思う。

Q.大学を卒業してからのキャリアを教えてください。
 学生のころはマスコミで仕事をしたいという希望を持っており、又オーケストラでヴィオラを弾いていたので、卒業して音楽系の出版社に就職しました。初めは宣伝部に配属されてPR誌を担当し、そのあと雑誌の編集に携わるようになりました。毎日忙しかったですが、コンサートもたくさん行けるし、好きな音楽に関わる仕事でしたからとても楽しかったですね。
4年が過ぎたころ、主人が留学でボストンに行くことになり、私も退職してついていきました。期間が2年あり、何もしないのはもったいないので、ボストン大学でマスコミュニケーションを勉強しました。英語に慣れるまで半年ぐらいかかりましたが(笑)、そこで学んだ広告やマーケティングがとても新鮮で面白かったので、帰国してから外資系の広告代理店に就職し、ラグジュアリーやヘアケア製品などのマーケティングを担当しました。
 仕事の環境としては恵まれていたのですが、広告だけでなくもっと広く、深くマーケティングに関わりたいと思うようになり、外資系の消費財メーカーに転職しました。そこではブランドマネジャーとして、何もないところから新製品を生み出して市場に送り出すまでを、開発・製造・営業と連携しながらやりました。担当したブランドは当時は会社の主流ではなかったので、苦労もたくさんありましたが、とても勉強になりましたし、徐々にブランドが知られるようになり、シェアや売上が伸びていくのが本当に嬉しかったし、自分は何かをつくる仕事が好きなんだなと、実感しました。
Q.その大手消費財メーカーで取締役として活躍されていますが、成功の秘訣は何でしょうか?
「ブランドの価値を高めてビジネスを成長させた実績」というのが答えになるのでしょうが、私はビジネスの成長だけを目標にしてきたわけではないし、取締役になりたいと考えたこともなくて、マーケターとしての純粋な気持ちで、どうすればこの製品が売れるのか、このブランドを強くできるのかをひたすら考え、コツコツと実行してきただけなんですよ。だから、結果が後からついてきたような感じでしたね。
 ほかの人と違う点をあえて探せば、担当したブランドを絶対に良くしたい、良くする道があるに違いないと考えて、それを探るのを止めなかったことでしょうか。まだ考えてないこと、気づいてないことがあるんじゃないかって、現状に満足せずに常に追求していました。執念深いのかもしれませんが……(笑)。
 改善の追及を続けているうちに、自分のゴールも上がっていったのでしょうね。そして、結果が実績として数字に残り、それが励みになって更に上を目指すという好循環になった。結果が伴わなければただの夢で終わってしまうので、夢を持ちながら最後はビジネスに繋げることが大事だと思います。
Q.そこからペットケア製品やスナック菓子を製造販売するマスターフーズに移られたわけですが、その理由は何だったのでしょうか?
 前職の最後はあるブランドのアジア全体を見る立場にいたのですが、毎月のように各国のオフィスを回り、ブランド戦略や発売プランなどの話し合いを行なって指示を出すことが主たる仕事でした。しかしそれでは現場感覚というか、自分がマーケティングに直接関わっている感覚が、ほとんどなくなってしまう。それが私には物足りなかったのです。一方では、会社としてのマーケティング戦略グローバル化が進み、地域ごとに独自に考え、実行するスタイルがとれなくなった。ブランドごとにグローバルでコントロールしたほうが効率的だという考え方なのですが、ゼロからつくり上げていくことが好きな私にとっては、仕事の魅力が薄れてしまうような方向転換でした。そういういくつかの要因が重なり、転職を考えるようになったのです。
それでいろいろな会社のお話を伺い、マスターフーズが自分に一番フィットしたというか、外資系のメーカーでありながらローカルの自由裁量の幅が広く、いろいろなものを自分たちで開発できる会社だと思ったので、転職を決意しました。

成功を点で終わらせず、継続させることが大事。

Q.マーケティング統括本部長のミッションをお聞かせ下さい。
 マーケティング統括本部長として、人、プロセス、仕事の進め方など、すべて新しいものに変え組織を一からつくり上げる事です。それまでのマスターフーズは、組織的にビジネスを進めるというよりも、個々人の能力やアイデア、ネットワークに依存してビジネスを進めるカルチャーでした。それはスピードや機動力の面では強みになりますが、ここ数年は競合環境も厳しくなり、マーケティングを戦略的に行ってビジネスを組み立て直すことが求められていました。ですから、会社の事業戦略を軸に、ものごとを包括的に考えてビジネスを進めていくという、根本的なところでの改革を行ってきました。
たとえば、新製品開発を発想先行ではなく、きちんと市場調査を行い、そこで得られたインサイトからコンセプトをつくって製品化していくスタイルに転換しました。ブランドも明確なポジショニングが必要だったので、複数のブランドがそれぞれ差別化され、ぶつかり合うことなく伸びていけるように、ブランドの定義から見直しました。
Q.会社から期待されたこと、また、経営におけるマーケティングの位置づけを教えてください。
 新組織でマーケティングを実行する体制を確立することです。消費者の視点で考えるという習慣の強化の為、意識改革から始めて、マーケティングを戦略的に行える仕組みをつくり上げました。そのための3カ年プランをつくり、日本オフィスでのコンセンサスは元より、グローバル本社からのサポートも取り付け、スムーズに動ける基盤を作りました。これからはその実行フェーズになります。
 経営におけるマーケティングの位置づけとしては、横軸である各事業部と連携し、マーケティング戦略の理解と実行を社内に浸透させ、ビジネスの観点で会社の成長に貢献することかと思います。
Q.小出さんが考える”プロフェッショナル”とは、どういう人材でしょうか?
 う〜ん、難しいですねぇ(笑)。現状に甘んじないことでしょうか。1つのことで成功したら、それをさらに発展させていける人。たまたま成功することは誰にでもありますよね。でも、それで満足したら駄目で、成功の先まで考え、維持を目指していく、成功を継続・発展させられる人が、本当のプロフェッショナルなのだと思います。そういう人は点としての成功を求めるだけでなく、常に全体として何をすべきなのかを面で考えている。それには、全体を見ることと細部にこだわることのバランスが必要になります。時間軸にしても同じで、会社としては今日の売上げと3年後の売上げの両方がいるわけですから、今と未来の両方を考えられなくてはいけない。
 マーケティングに限って言えば、感性と理性のバランスがとれている人がプロでしょうね。感性がなければマーケティングで成功できないけれど、最後は数字に繋がらなくてはいけないので。若いときは感性だけで走ることもできるでしょうけど、マネジャー以上になると、立ち上げだけではなく、それをいかにして10年継続させるかがとても重要なタスクになる。そのために、どうすれば利益を出し続けられるかをデータと経験値から必死に考える。だから私も、データにはとてもうるさいし、数字の論理性を重視します。それでも最後は、感性の部分で判断する事もあります。「でも、こっちのほうがいける気がする」って(笑)。勿論あてずっぽうではなく、経験値から、と言ったところでしょうか。
Q.マーケティングから経営者のキャリアパスについて、そしてマーケターにとって大事な要素は何だと思われますか?
 業種によって違うと思いますが、消費財メーカーの経営に限って言えば、やはり市場、消費者をよく知っていることが必要であり、そこに送り出す製品をどのように作るか、それをどう売ればよいかが包括的にわからなくては、ビジネスとして成功させることは難しいでしょう。その意味で、マーケティング経験者がトップになるケースが多いのかなと思います。マーケティングの役割は業界によって違うと思いますが、マーケターとして必要な事は、常に市場を観察・理解し、結果を出す事、そして、実行後の経過観察と改善による、結果の維持を心がける事かと思います。
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