ミシガン大学のMBAホルダーでもある中島氏は、外資系企業で求められる人材像を、ビジネススクールで鍛えられる「問題解決力」をキーワードに解説してくださった。
外資系企業といっても、米系、欧州系、アジア系でカルチャーは全く異なる。しかし、その中でも日本支社に共通するのは、一部を除いて、あくまで規模が中小企業レベルである点だ。
MBA教育で繰り返される問題解決訓練と、中規模組織で求められる個々人の機動力は非常に似ている。そのとき必要になるのは、以下の三つだ。
- 問題・課題の本質がどこにあるのか発見する力
- それを解決するために、代替案も併せて列挙する力
- 具体的なアクションプランも出す力
人・モノ・カネ・時間という経営資源は、あくまで有限である。それを最小限に組み合わせて活用できるスキルと知識を身に付けるのが、キャリア開発であると中島氏は指摘している。
「例えば、外資系企業というと、即、英語力に目を奪われる人がいます。しかし、Gapのように英語が不要な外資系企業もあります。では何が必要かといいますと、問題があるから自分の役割がある、
という発想ができるかどうかなのです。日本企業にいると、人材の問題解決力は何故かだんだん落ちていくようですね。」
中島氏に、日本企業と、外資系企業で働く人々の、役割認識の差と、問題解決力に必要な要素を挙げてもらった。
日本企業と外資系企業のビジネスパーソンに見られる役割認識の差
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日本企業 |
外資系企業 |
| 目標が100だったら? |
「80%やれば文句は言われまい」 |
「2、3歩先に起こることに手を打っておかねば。120%に挑戦してみよう |
| 何のために会社にいるか? |
「生活と自己実現のため」 |
「その仕事をするのが自分の役割だから」 |
何が足りないのか? どうしたらいいのか?
- 自己責任と企業責任の差が曖昧
- 目標やゴールをちょうどいいレベルで提供されないと動けない
- 果たすべき役割を整理していないために、プライオリティがつけられない
- 従って、力の続き方にムラがある
- 見込み違いに対して、過去に何をしたか洗い出す訓練を、マネジメントレベルが受けていない

「ソーシャル・キャピタル」・・・耳慣れない言葉だが、これは、人と人とのつながりを持つ人材に価値を見出す、新しい人材概念だ。
日本でも、社会システム研究の第一人者である公文俊平氏(国際大学グローバル・コミュニケーションセンター所長)を中心に、ソーシャルキャピタル学会を作る動きが出始めている。
中島氏が翻訳にあたった経営書『ソーシャル・キャピタル』に詳細は述べられているが、いったいどんな概念なのか、かい摘んでお話いただいた。
人材をどう捉えるか――概念の歴史的流れ
戦前・・・人材は材料と同じように「仕入れる」対象として、数量管理のみ行われていた
⇒人数管理の時代
80年代・・・ハーバード大で、人的資源管理の必要性が唱えられる
⇒日本的経営(全体主義)への傾倒
90年代・・・投資すると人材価値は増す、という考えが出始める
⇒成果主義やコンピテンシーといった個人の能力、ヒーローの時代へ
21世紀・・・個人の能力で結果が出る時代の終焉。人脈で生まれる価値に注目
⇒チーム、相互主義
・・・社会に開いたネットワークを持つ人材へ=ソーシャルキャピタル
「つまり、従来、組織内で閉じていた人材同士のつながりが、より社外に開いたものになってきているのです。
情報が入って来るために、そうした人材は変化に強い。では、ネットワーク力を維持するためにはどうしたらいいだろうか。または、外的ネットワークをどう組織に取り込むかという考えが出てくるのです。」
現代は、一日の半分以上がコミュニケーションに費やされる。個人だけで結果が出る時代は終わり、業績評価ミーティングにしても、
確認の作業にしても、様々な人の意見を集めるのに、オンラインと対面での使い分けが結果の差を分ける。これは問題解決能力にも影響を及ぼす。
「役割」を充分に果たすには、人脈と情報をどう組み立てるか、ソーシャルキャピタル力が必要になってくるのだ。

「Gapは苦戦している」 というのが一般消費者の認識だろう。衣類は消費財の代表格。感覚として、それは半分は正しいが、ビジネスパーソンとしては不正確な感覚だ。歴史を遡ると、マクロな経済動向は、いつもGapの動きを後追いしている。
Gapはいつも、真っ先に調子を落とし、真っ先に回復する。そして市場では苦戦していても、必ず利益を叩き出している。
問題解決力の塊のような会社である。
「策は講じていますから、そろそろ効果が出始める頃です」
と、中島氏もくったくがない。この自信の根拠はどこにあるのだろうか。
Gapでは、世界3000店舗の直営店から、常に顧客動向の情報がダイレクトに入る。
それに加えて、先に紹介した「先手を打つ」問題解決人材を集めてきた手腕である。
Gapで求められている人材とは、市場とダイレクトに繋がる情報に直面したときに、以下のような条件に当てはまる必要がある。
〜Gapの求める人材像〜
- 自分の役割と、自分のビジネスと思ってオーナーシップを発揮できる
- 発想が柔軟
- 販売員も本部従業員も会社の顔。行動指針に基づき、ミッションを果たせる
「Gapでは、細かい変更は一ヶ月単位、フルラインの変更も半年で行います。これがトヨタだと1年、GMなら3年かかる。人材のマインドも、OJT(On the job training)のコーチングで随時カバーしていきます」
日本人は変化に弱いと言われる。そして、変化を褒めあう文化もない。Gapの行動指針を浸透させるためのリコグニションカードは、三枚の複写式になっており、一緒に仕事をした人が指針にのっとった行動を起こしたときに、感謝の気持ちを添えて渡す仕組みになっている。恥ずかしがらずに褒めあうことで、日々の向上に努める。この試みは、グローバルで行われている。
「ささやかでも、認め合う場を制度として設ければ、コミュニケーションもうまくいくのです。貰ったペーパーをデスクに貼ってあったり、英国からEメールで送ってきたり、とても嬉しいものですよ。」
〜行動指針〜
- 一人一人がキープレイヤー
- 目指すのは一歩上
- 責務の完遂
- シンプル・イズ・ベスト
- 賢いリスク・テイキング
- 常に前進
- 正しい行動